例によって8月のお盆は暇だった。
亀田さんが、「北海道の残り半分いつ行くの?」と再三聞いてくるので「行きましょうか」ということになった。決断さえすれば、ことは簡単。行くだけだ。亀田さんとは札幌の近くで合流することとなった。亀田さんは仕事の都合もあり、13日の朝出る。「千歳空港からだから多分、銭函あたりで合流するのがいいかなぁ、13日の昼頃かなぁ」とアバウトな計画を立てる。
ネットで道路公団の渋滞予報を細かく分析して8月11日(金)の朝5時45分に家を出る。距離メーター140,275kmでスタート。快晴、無風。
東北道をひたすら快調にとばして昼前後に安達太良山SAで昼食。渋滞は全くなしで午後2時過ぎに青森に着く。今回は青函フェリーの予約をしていた。夜22時の便しか空いていなかったが、だいたいキャンセルとかがあるので空きが出て早めに乗ることが出来る。それを考えて早めについてキャンセル待ちし、函館で一泊するつもりだった。しかし、キャンセル待ちの人数が予想を遥かに超えていた。連絡船乗り場でチケットの係に尋ねると「今並んでる人でも今日中に乗れるかどうか分かりません。チケットがあるなら予定通りの便の方が確実です」とのことだった。仕方なく夜9時頃まで時間をつぶすことになった。
青森市内は昨年ぶらついたので、だいたい把握していた。時間はたっぷりある。まずデパートに入って下着やらTシャツ、ハーフパンツを買う。「十三湖のシジミ焼うどん」の看板に吊られて食べる。チョツとほっぺが赤い若い兄ちゃんが鉄板で焼いてくれた、その焼うどんはとてもうまかった。映画でも観ようかと探した。商店街の自転車やの前でスタンドにしたまましきりに自転車を汗だくになって空でこいでいるオヤジに聞くと「すぐそこにあるよ!」と教えてくれた。無愛想なオヤジはまたこぎ始めた。
しかし映画館はやっているが、一日一上映を3本やるだけの予定で、しかもその間に時間がある。噛み合ない時間だったのであきらめる。喫茶店に入って時間をつぶす。喫茶店のおばあさんに「この辺りにサウナない?」と聞くと「サウナ?」としばらく考えて場所を教えてくれた。だが行ってみるとスポーツジムでシャワーはあるらしいが仮眠なんてとんでもないところだった。ばぁさんはサウナの意味が分かんなかったんだと思う。仕方なく駐車場に車を取りにいき、駐車場のオヤジに「青函フェリーに乗るんだけど、仮眠出来るような時間つぶすとこないですかねぇ」と聞くと「あるよ!フェリー埠頭の入り口に健康センターっちゅうんがあるさ。みんなそこで時間つぶすらしいよ。」
なんだあるじゃないか。早速行ってみると想像していたよりもはるかに大きく充実した温泉施設だった。大浴場、大宴会場、ゲームセンター、そしてなにより大きな仮眠室。ああ去年もここ知ってたらなぁと思った。
とにかく寝ようと風呂にゆっくり入ってから仮眠室に入る。午後4時頃。
なにやら騒がしい音がするので目を覚まして、音のする方に行ってみると大宴会場の舞台で旅芸人一座の公演をやっていた。三度笠姿のおっさんとどう見ても60は過ぎてる着物姿のおばさんが恋人同士の別れ話を演じている。時計を見ると7時半、晩飯に海鮮ラーメンを頼んだ。必死に拍手喝采しているばあさんの集団とテーブルで向かい合いながら、舞台に背を向けてまずいまずいラーメンをすすった。
フェリー乗り場は深夜にも関わらず人でごった返していた。予約なかったら翌日になっていただろう。
フェリーの中では昨年の経験から座敷の部屋はやめてソファーに座った。たっぷり寝ていたので本を読んで過ごした。
函館に着いたときは12日の深夜2時40分、夜走るのはもったいない、しかも、船酔い止めの薬による睡魔が襲って来た。仮眠するところを探す。ガソリンスタンドで青森の健康センターのようなものがあるか聞いてみると、教えてくれた。が、行ってみると「2年前に深夜営業をやめた」と中にいたステテコのオヤジが言った。深夜3時に薄暗いロビーのようなところでソファーでテレビを見ていた。「サウナはありますか?」「さあな、市街にあると思うがなぁ」。
仕方なく逆方向の市街地に行く、探す、ない。そうこうしているうちに面倒になってしまい、そのまま走ることにした。まずまたもと来た道を戻り、津軽海峡を左に見ながら国道228を松前方向に進む。今回の旅の始まりだ。
江差を過ぎた当たりでもまだ暗い、しかも小雨がぱらついてきた。眠い。路肩に止めて眠る。
コンビニの駐車場に止めて眠る。それを何度か繰り返した。何分寝たのか何時間なのか感覚がなくなってきた。腹を決めて寝ようとすると目が冴える。また走ると眠くなる。
それでも、雨が上がり辺りが明るくなり、きれいな日本海が眼前に迫ってきたとき、だんだん元気が出てきた。今回の旅のハイライトになるだろうと思っていた、積丹までの海岸線は想像どおりすばらしい景色の連続だった。くねくねした道路が絶壁の下を通り、くりぬいたトンネルを通る。左には奇岩と紺碧の海。島牧村というところで寿司屋に入り「生ウニ丼」2000円を食べる。
たっぷりと寿司飯の上にのったウニが・・・・。新鮮なんだろうけど途中で気持ち悪くなってきた。私には多すぎた。
岩内についたのは、午後三時頃、ホテルを探していると出来たばかりらしいホテルがあった。
まだ駐車場に車が一台も止まっていなかった。空いていたのチャェックイン、とりあえず寝た。
夕方6時半頃に起きだしてみると、一階のレストランは満席に近いし、駐車場も満杯だった。
近くに飲食店がなさそうなのでホテルのレストランでビール、日本酒を飲み、ふらふらと下り坂をおり、港の方に出たが閑散としていて店もやっていそうなところが見当たらず断念。
またレストランにもどり、シューマイやら春巻きやら(どうゆう訳か中華)とスコッチを頼んだ。
なぁんにもない、なぁんにも言わない「岩内」の夜だった。

積丹


女人禁制の文字