岩内のホテルを5時40分に出発。6時に目覚ましをかけておいたのに4時半には起きてしまい、シャワーを浴びて飛び出した。
8/13日、懐かしの積丹半島を目指す。快晴、無風。
積丹は学生時代に二度来ている、一度はいい加減な写真同好会の撮影旅行。
女の子が旅行に参加すると聞いて同好会に入った。でも気になる女の子もいず、期待していたようなことはまるでなく(って何を期待していたのか?)ただ、ただ景色がよくて、それに見とれていた。
もう一度はヒッチハイクで来た。札幌から学友とヒッチハイクでトラックに乗ってきた。
とにかく「又いつか来よう」と心に誓っていた。
いずれにしても30年以上前の話だ、記憶も遠のいている。
久しぶりに見る積丹はやはりすばらしいかった。光り輝く青い海に緑色の半島が映えている。
しばらく海を見ていた。女子高生の集団が「女人禁制」の看板を見て大はしゃぎで半島の尾根の遊歩道を行き来している。
半島は見るポイントがいくつもある。車でぐるりと国道をそれて岬の近くまで行く。歩く。このきれいな海と空と空気を見るために来たんだとつくづく思った。
小樽に向かう途中、数年前にトンネル崩落があった場所に着いた。慰霊碑があり、手をあわせる。
亀さんから携帯にメールが入る。
銭函は北海道で数少ない海水浴場の近くだ。さすがにここは道路が込み合って若者でごった返している。しかも、銭函には鉄道の乗り継ぎが悪いことが分かり、手稲の駅で待ち合わせた。
午後一時30分に亀さんと合流。いつになく?(いつもか?)はしゃぐ亀さん。
手稲から一旦海岸線に戻り石狩を目指す。走ること数十分・・・・。渋滞にはまる。
どうして高速道路と平行している、内陸よりの一般道が、渋滞になるのか結局分からずじまいだったが、海岸線に出た頃はガラガになった。亀さんは日本海の風と景色にため息をついていた。
海岸沿いの食堂で遅い昼食をとった。ホッケの焼き魚定食。
今日はどこまで行くか話を始めた。出来るだけ走っておきたいところではあったが、ちょっと渋滞でロスがあったのでまあ予定通り「留萌かな?」それより先だと天塩辺りまで町らしいのがないし・・・ということでなんとか頑張って留萌までたどり着くことにした。
亀さんが留萌のホテルに電話すると「部屋はお取りできるんですが、音が、」「音がどうしたの?」「いえ、気になさらないようでしたらいいんですが・・・」「そんな言い方されたら気になるよ」「あのエアコンの室外機がですね、窓のすぐそばにある部屋しか空いてませんが」「
どういうこと?みんな部屋の窓の外にあるんじゃないの?」「いえ、すべての部屋の室外機が北向きの壁に集中してまして、そのシングルの部屋2つの窓がうるさいとよく言われるんです」亀さんは相手のフロントの女性が声の感じがいいと携帯のマイクを抑えて言った。とりあえず予約だけして他をあたることにした。もう一軒はすぐにとれた。午後5時20分留萌に着いた。ちょうどいい感じに赤く染まった黄金崎の夕日を海岸沿いの道で見ることが出来た。
かの音がうるさいと言うホテルを探してみるとすぐに見つかった。確かにきれいなホテルではあったが壁一面に室外機が並んでいる。壁の中央に窓がある部屋が見えた。その部屋を外から眺めながら、そのホテルのフロントの女性に電話でキャンセルした。「ごめん、今その窓眺めてるけどやっぱりうるさそうなんでやめるわ」
もう1つのホテルはかなり古い陰気なたたずまいのホテルだった。
薄暗いフロントに行っても誰も出てこず、呼び鈴を数回鳴らしてから、やっとノーネクタイのくたびれた男が出てきた。そのとき我々の後ろに背がすらりとした女性が一人で現れた。チェックインの手続きをしながらちらりちらりとみるとその女性はバッグを両手で体の前に持ち、白いつばの大きな帽子と白っぽいフレアなワンピース。およそこのホテルには不釣り合いな30前後の妖艶な美女だった。
亀さんは既に心ここにあらず状態で、筆記しながら私にアイコンタクト。(こっちは既に承知っ!)
鍵を渡され歩き始めると正月の琴のような軽やかな声か後ろでした。「予約してます、白鳥です」と聞こえた。
オヤジ二人は、もうコウフン状態でエレベーターの中になだれ込み、「一人旅かなぁ」と同時に言った。
当然のごとくすぐにシャワーを浴びて夜の町に繰り出すための準備。亀さんがフロントのさえないオヤジに大胆にも「先ほどの女性は一人?」ときいた。するとフロントは不意をつかれたように下の資料を見ながら「えーと、そうですね。お一人です。」「いや、別にカンケーねぇけどね。」するとフロントは「ああっそうですよね」と応えてしまった失敗に苦笑いをしていた。
「この辺でおいしい魚料理を食べさせるような店ない?」と尋ねると地図を書いて教えてくれた。それからわれらオヤジふたりはその地図の店に行きすがら、白鳥嬢の身の上をあれこれ想像した。
荷物の量からして遠いところからではない。失恋の末の手負いの娘か?いやちがう、留萌のいや、隣の市のハゲじじい市議会議員との逢い引きだな。「ヒェーっそりゃぁつらすぎる。」と私。でも私らだってもう十分ジジイなんだが・・・。「それにしてもいいなぁあの娘、ちょっと待ち伏せる?」と亀さん。「いいねえっ、良かったらご一緒に!って言っちゃう?」とか言ってるうちに教えられた店に着くと「しばらくの間休業」の張り紙。
なんとなくぶらぶら元来たホテルの方へ足を運び、誰かを探すそぶりしながら「どうしようか?」と・・・。そうこうしているうちに辺りはすっかり暗くなり始めてスナックなどの明かりが目立ち始めた「if」とだけ書いた妙な看板の店の前に立った。「変な名前だなあ、やめよう」と亀さんが言うのでまた歩き始める。しばらく歩いて数件のぞいたところで「今日はコボにまかせる」と亀さんが言った。金沢での失敗を思い出したのか。「じゃあのイフ行ってみよう」と言って戻って入った。
和風居酒屋という感じで恰幅のいい女主人が一人でやっていた。いつものように旅の話を初めて盛り上がった頃、隣で先に呑んでいたオヤジが「この人ねぇもとスキーでインターハイ出てんだよ」と女将をさして言った。「どこでやったインターハイ?」と私が聞くと「長野県の飯山だよ、アルペンの北海道代表」「ひぇーっ、ということは26年とか27年生まれ?」「なんでぇ、分かるの?27年だよ。」なんと私と同い年だった。私は高校でサッカー部に所属していた。運動部は全員かり出されてインターハイの裏方をやった。ジャンプ台を踏み固めたり、クロスカントリーのコースを造ったり。彼女はそのときチームになった札幌の選手が飯山の選手と交流するようになり、縁があって野沢温泉の民宿に嫁いだなどとも話した。私も亀さんも野沢温泉によく行く。私の従姉妹が野沢にいてよく知っているので、携帯で電話して聞いてみたら、確かに民宿に嫁いでいて名前も分かった。それから女将は「うれしいねぇ」と陽気になり、「せっかく北海道に来たんだ、毛蟹食べてないっしょ」といって大きな毛ガニを出してくれた。「真夏でもあるんだぁ」と亀さん「あるよっ」。「きったねぇ、たべかだなぁや、こうして食べんだよ!」といってゲタゲタ笑う、陽気な女将だ。そこへ彼女の同級生が入ってきた。札幌近郊から帰省して留萌に来たらしい。
しばらく呑んでいるとなぜかその女客が自分の旦那自慢を始めた。しばらくからかいながら聞いていたが、だんだん聞くに堪えなくなってきたので、女将に近所のスナックを教えてもらい、その店を出た。二件ほどとなりに雑居ビルがあり、「松子」というシンプルな看板が目に入り、吸い込まれるように入った。背の高いママが一人でカウンターの中でちょっと猫背に立っていた。ちょっと呑んですぐ「松子っ!背筋のばして!」と亀さん。どうも背の高い女性は猫背になるらしい。低い人とばかり話すからなのかな?「よく言われるんです」とまじめに言ってママは背筋のばしてグラスにウイスキーを注いだ。「松子っ、イフと店の名前交換した方がいいよ!」。
そこでしこたま呑んでカラオケを歌って、外に出るとさきほどの「イフ」の前で学生風の若い男が二人店に入るのを躊躇していた。亀さんがその若者に「ここは安いから大丈夫、はいれはいれ。」とおせっかいをすると「マジすか?」といい入っていった。つられるように私と亀さんも入り「又来たよーっ、しかも客つれてー!」と。女将と旦那自慢の女はあきれながらも「店を締めて呑もう」と言い出した。
これは私と亀さんの得意技?名付けて「出戻り作戦」だ。以前町田辺りで呑んだとき、キャバレーみたいなクラブみたいな場末の店に入ったら暇なホステスがいっぱいいてハーレム状態になった。なかなかかわいい子がいて気に入ってしまい、「またぁ、来てぇ、今度は指名してねぇ、いつ来る〜ぅ」と言われながら一旦〆て帰り、しばらくして「やぁ、久しぶり」と言って入る。するともう、大はしゃぎ。というわけだ。その印象のインパクトたるや絶大である。(なっだけなんだけどね。まあいいじゃん)
それから若者を含めて6人で呑んだ。若者は名古屋から札幌の友人を尋ねてきて、北海道一周を車で始めたばかりと言う。話が合って深夜まで呑み続けた。
帰りに勘定を払ったが、多分青年の分も払わされた気がする。まあいいか。
結局泥酔状態でホテルにどうやって帰って、寝たのかさえおぼろげ。室外機がうるさいホテルでも全然眠れたと思うが・・・。それでも、まあいいか。