8月14日、午前6時。小雨。
白鳥嬢にはついに会えなかったが、留萌の夜の楽しかったことを思い出しながら小雨の国道を北へ走る。
しばらく走ると晴れて来た。そのとき見た風景は私の目に焼き付いて今でも離れない。
ちょうど峠を越えるようなかたちて下りになった道路のその先に、ちょっとした漁港の集落があり、その左向こうは、青い空と夏の雲、光り輝く海。集落を越えて続く道路は緩いカーブを描きながらもっと先に見える緑の半島へとのぼりながら続いている。その半島の上には風力発電の風車が何本か間隔を置いて立ち、ゆっくり回っているのが遠くでも見える。雨上がりの空気が、すべてのものをくっきりとさせている。鮮やかなコントラストだ。まるで宮崎駿のアニメの一シーンだ。飛行船やら、箒に乗った魔女やらがとんできそうな感じがする景色。ちょっと見とれながら走ってしまい、カメラを構える場所を見逃してしまった。戻りたくなったが、又あるかな?と思って走った。・・・・。車を止めて撮影しなかったことをこれほど悔やんだことはない。もっとも私の写真技術では、そのイメージ通り撮れるか自信はない。撮って後で見るとがっかりしてしまうことが多い。
国道232号から日本海オロロンラインに入る。地図上では海岸沿いをまっすぐ稚内に向かっている。
しばらく行くと若者がサーフィンをやっている浜辺が見えてきた。その海の家のようなレストランで朝食を食べることにした。私は、いくら・コッコ丼で、亀さんはウニ・コッコ丼。コッコとは魚の卵のことでいくらよりずっと小さな濃い赤い色の卵だ。魚の名前は聞いたが忘れた。店主はいくらやウニより好きだと言っていた。が、やはりいくらの方がおいしいなぁ。
走っても走ってもまっすぐな道。時々風車があるがそれ以外は、濃い緑の原野。左は海。
11時20分。野沙布岬、快晴で無風、暑い。自分の娘と剛健君を殺めた(あやめた)鈴香容疑者(このときはまだ)に似た女がガソリンスタンドで給油してくれていた。
12時5分。宗谷岬。ついに来た、最北端の岬。
岬をぐるりと回り、宗谷海峡からオホーツク海になったとたん。
一天にわかにかき曇り、激しい濃霧。まるで前が見えない。「さすがオホーツク!」とほぼ二人同時に叫んだ。はらはらしながら走っていくとだんだん視界が良くなって、やがてもとの晴天になった。
海の色が更に濃くなったような感じだ。道の駅によって、店の人に「この辺の海は泳げないの?」と聞くとびっくりしたような顔で「泳ぐ?そんな人見たことねぇなぁ」
本州の太平洋岸の海水浴場はどこも足の踏み場もないような混雑をしているのに、このきれいな海岸線には歩いている人も犬一匹もいない。ときどき大きめな海鳥がゆっくり飛んでいるだけだ。
3時ごろ。ここまではかなりの走行距離だ。だいぶ疲れてきたので次の宿泊地を検討する時が来た。
紋別か湧別か網走か?網走までだと7時を過ぎてしまうのではないかと予想して、湧別まで頑張ろうということになった。しかしガイドブックにはホテルがない。やはり網走まで行くことになった。
ホテルルートイン網走に着いたのは結局6時25分だった。メーターは142,278キロになっていた。
網走の町ではさすがに昨日から今日の強行に疲れ、探す間もなく近くの居酒屋に入った。
隣のオヤジに「明日、知床に行くんだけど混んでますかねぇ」と聞いてみた。知床が世界遺産になったばかりなので、一本道しかない半島の道が心配だった。「だいじょぶだぁ、なんも」と半分酔いつぶれ気味のオヤジ。鉢巻きした板前が「いやぁ、朝早く行かねぇとダメダメ混むって!」
早めに切り上げて寝ることにした。
翌日はウトロあたりからあいにくの曇天、知床の峠は霧で真っ白、何も見えない。羅臼まで下った。
去年は大雪で5月なのに雪が降って通行止めだったので峠を断念していた。ここで北海道完全制覇。花波メーリングリストに完全制覇を伝える。
羅臼からまた峠を戻りウトロ、網走と走り、高速道路に。
札幌に夕方着いた。その翌日札幌で雨の中ゴルフをして亀さんを千歳空港におろした。
そこから函館まで高速一般道とつないで夕方についた。例によってフェリーのキャンセル待ちをするとすぐに空きが出て乗れた。
徐々に遠ざかる函館の夜景をフェリーから見ながら、「もう、北海道にくることはないかもなぁ」とちょっと寂しくなって来た。港で買った焼きトウモロコシとミネラルウォーターをにぎりながら、ちょっとウルウルしてきた。
深夜に青森に着き、そのまま高速へ。疲れがでてきたので、何度もサービスエリアで仮眠をとりながら走り、翌16日の10時近くに家に着いた。