早朝、まだ薄暗いうちにおきだしてチェックアウト。車で桂浜に向かう。駐車場から浜へ出る途中大きな土佐犬の散歩に出くわす。闘犬用のその犬はタレさがったまぶたの隅から私を見て興味もなさそうにすぐ目をそらし、のしのしと歩いていた。
浜に出ると日の出の瞬間を見ようと若者たちがたむろしていた。酔っぱらって朝を迎えたのだろうか、一団の中にはぐったりしてへたり込んでいる男女が混じっている。
坂本龍馬の像の前から龍馬と同じ方向を見た。遥かに北米大陸があるのを想像しながら見た水平線はいつも海岸線を走りながら何気なく見ている水平線より遠く感じた。
飴売りのおじさんが店の準備をしながら「ずいぶん早起きだねぇ」と声かけてきた。今年の台風で松がみな立ち枯れてしまい困ったもんだと話していた。
桂浜から海岸線を国道55号目指して走る。右は海岸線道路の左側に立派な門構えの家が建ち並ぶ。石垣で塀を作っているのだがその石がすごい、サツマイモのような形の巨大な石が尖った方をぼこぼこ道路側に突き出し、くみ合わさってできている石垣だ。石垣の外側から見える見越の松も皆巨木だ。なんとも「土佐の男っぽさ」を感じる。
朝飯を食べるところを探していたが見つからず午前10時頃に室戸岬までついてしまった。岬に一軒だけレストランがあり、駐車場に車はなく、周りに人気がないので開店前なのかなと思ったが一応のぞいてみるとオートバイで来たのか店内に数組の客がいた。おにぎりとみそ汁とコーヒーを頼んだ。
空は曇天に変わり、写真もなかなか撮る気にならない。変わり映えのしない景色が続く。
所々に桜が咲いているのを見るようになった。ラジオで言っていたが台風の影響で季節を間違えて「狂い咲き」しているらしい。お遍路さんがひときわ目につくようになった。遍路は例の白装束に傘、杖のいで立ちもいれば、ジャージー姿もいる。ちょうど私は遍路と逆回りになる。

「台風の 爪痕残す 道なれど 遍路の傘に さくらばな散る。」

今夜は徳島に泊まって、翌朝ゆっくり東京へ帰ろうか?と思っていたが順調に走ったので3時頃には徳島についてしまった。そのまま走り鳴門大橋を今度はそのまま高速でわたる。あっという間に出発点の明石についてしまった。なんだか走り足りない気がしてそのまま走り続けると花波のムツミちゃんから携帯電話「いまどこ?」と。「西宮」「ええっまた西宮?」そう3日前に同じあたりを走っているときにも電話があった。笑えた。
阪神高速から名神に入り名古屋を目指すが、渋滞。そういえば今日は10月3日、日曜日だ。主要都市を通過するのに渋滞はさけられない。一路中央道に進路を変える。しばらく走ると強い雨になった。長野方面という看板が出始めた頃、長野の実家の村祭りが10月4日だったのを思い出した。かみさんに電話する「今、四国からの帰りだけど、これから長野の実家に行くよ。明日祭りなんだよ。」「ああ、いいわねぇ気をつけて!」
長野県中野市の実家についたのは夜10時頃だった。土佐の桂浜から出たこの日だけで1000キロ走ったことになった。さほど疲れもなく、そのまま宴会に参加した。