かなり酔っぱらっていたのでバタンキューで寝てしまい、明け方気がつくと着替えもせず何もかけずベッドにいた。しかし熟睡したので6時頃すっきりと目が覚めた。
昨夜のカレーだけの食堂はおにぎりとみそ汁だけの食堂になっていた。おにぎりを食べて松山の街を朝7時に出発。道後温泉は昨夜となりにいた女性が「私ね、朝ドーンという太鼓と一緒に一斉に入るのが気持ちいいよって言われて最近行ってみたんだけど、そうしたら道後の温泉て透明なんだってそのとき初めて知ったんですよ。小さいときから黒い温泉なんだと思ってずっと入っていたんですよね。(笑)」「きったねーっ本当かよ(笑)」となりのオヤジ。などなどを思い出し笑いをしながら伊予を目指した。
天気晴朗なれど、波高し。やはり台風の爪痕が各所に残り通行止め、迂回ばかり。
佐田岬を目指すも197号国道が通行止めとあり、狭い海岸よりのみかん畑をくねくね走る。なんとか瀬戸町までたどり着いたが先端の三崎町までは断念。国道378号まで引き返す。宇和島、縮毛、そして土佐清水から足摺岬を経て四万十川に着いた頃は2時近かった。四万十の河口からさかのぼる途中に「うなぎ、ごり、いわな」とのぼり看板があった。その名も「レストラン四万十」。さすがに平日の午後2時客は誰もいない。四万十川が一望できる2階のゴザ座敷。半分露天風によしずでできた屋根。川風がきもちいい。うなぎやイワナの定食は3,000円位から5,000円、結構高かった。弁当でイワナ、うなぎ、ゴリが少しづつ入っているのがあって1900円。これを頼む。ヨシズの支えになっている柱をふと見ると「うなぎは輸入もの」と炭文字で大きく書いた張り紙があった。大笑いだ。でもある意味良心的である。でも道路ののぼりには書いてない。味は・・・ゴリの天ぷらは電子レンジ?。
それから四万十の橋を渡り一路高知へ、いっぺんにわかにかき曇り、大粒な雨。やがて最高速のワイパーでも先が見にくいほどの大雨になる。高知の街についた頃は雨も上がり夕焼けが出てきた。駅前のビジネスホテルにチェックインしたのが7時頃。早速昨夜松山「いわし料理の店」の隣の客に書いてもらったクロソンに繁華街の入り口らしきところから電話。「あの、初めてなんですが・・・松山の方から教えてもらってかけてるんですが場所教えてもらえますか?」「今日はいっぱいですけど、ちょっと待ってください」と素っ気ない。すると素っ気ないお姉さんがまた「あのぉ松山の誰からお聞きですか?」そういえば名前聞くの忘れた。「あっいや名前聞き忘れたんですが、一人なんですけどダメですか?」またしばらくして、「どこにいるんですか?」と・・・場所を言うと「それならすぐ近くなんで、そこにいてください。」とすぐ切った。名前聞き忘れたので、昨夜の領収書があるのを思い出し電話する。「あのぉ昨日お邪魔したものですけど・・・・」「あああの人?昨日初めて来た人で知らないのよ」ええっ常連じゃなかったんだ「隣の女性はたまに来るけど名前知らないし・・・」しばらくすると女性に声かけられた。「電話したお客さん?」みると30代後半、カッポウギきたおばちゃんが来ると思っていた。ずっと若いし、ちょっといい女。でもニコリともしない。「はい」といってついて行く。狭い路地を入って行くがなかなか着かない。「一度迷ったらもうわかんないところなんですよ、高知初めて?」「はい」何だ怖いと思ったら優しいんじゃん。縄のれんの店に入るとにぎやかな炉端居酒屋風。奥の小上がりも満席。カウンターに無愛想なパンチパーマのオヤジ。たぶん50代半ば、いや私とおんなじ位?「松山の誰に聞いたの?」「それが店で一緒になっただけで名前聞き忘れて」「だめだよ名前位聞いといてくんなくちゃさぁ、松山にはダチ一杯イッカラヨ」「はぁ、すみません。高知に行ったらクロソンに寄ってカツオ食べろ!」と言われたんですよ。電話番号ソラで書いてましたよ」ちょっと唇の端がニッとして「誰だろうな気になるな。」と手を休めず言った。「すみません。」「けど、カツオ無いよ。」と当然のようにU首のシャツ(アンダウェアの)から真っ黒な太い首や腕をみせて睨むように言った。「・・・・」「台風の影響であがってないんだよ」「ああ、そうですか、それじゃ・・・」「・・・・せっかくだから、脂のって無いけどちょっとカツオ食べるか?じゃ他の魚と盛ってやるから、なっそれでいいだろ。こんなんじゃないんだからなうちは。」「はっはい」結局カツオ出してくれた。5切れ位の大きなぶつ切りのマグロそれと太刀魚?サバなど赤みの刺身を15センチ位の長方形のお皿に山盛りにしてくれた。これでもかという位のにんにく、そして丸のままのスダチ。「ええっこんなに!」と唖然としていると、やり取りを聞いていた隣の男がたまりかねたように「スダチを皮のままこうやってすりおろすんだよ」と小さなおろしガネでやってみせた。「なるほど」しばらく刺身と格闘しながら日本酒を冷やで呑んだ。そしてなんか食べようかなと廻りを見たがメニューらしいものはない。忙しそうにしている店主は声かけにくい。腕組みして店内の他の客の様子を見ていると前出の客が「お兄さん、大声で注文しないと何もでないよ、この店は・・・」と声かけてきた。「はあ?何がいいですかね?」「何でもあるけど何でもまずいよ」すると連れの若い健康だけが取り得そうな女性が笑いながら「美味しいんですよここは、この人おかしいから。たとえばこれ。」と魚のミンチボールの揚げをさした。「すみません」とカウンターのオヤジに声かけた「大将、呼んでるよ」と隣の男。オヤジはうるさそうにこっちを見た。「あのこれと同じのください。」と私が言うと「それ終わった。」とすぐ返ってきた。カップルが笑っている。無下に言われたのを気の毒がって「これよかったらどうぞ、私たちもうお腹いっぱいだから」と皿をよこした。こうゆういわゆる「おせっかいなやつ」を嫌う人もいるが、私は結構好きだ。特にこのカップルが最初から妙に気になっていた。二人ともビールだったが私はミンチボールのお礼にと「呑みませんか?」とお銚子を向けた。するとふたりとも呑んでくれた。大将は一瞥したが何も言わず相変わらず忙しそうにしている。その男は自衛隊上がりの役者○○に似ている。(最近俳優とかの名前全くでてこないないんだよね)いかにも土佐オトコの豪快な感じ。40半ば位。連れの女性は30そこそこ、胸も腕もよく見えないがミニスカートの腿も着ている服からはみ出してはち切れんばかりだ。
しばらく私の旅の話で盛り上がっていたが、ちょっと飽きた頃。男が彼女に向かって言った。「お前、喰ってばかりいないで、たまには俺にやらせろ!」「めちゃっ、エッチしたいけど、あんたとじゃ、絶対やだっ!」店中に聞こえたんではないかぐらいの声だった。「・・・・・・」私は無言。連日の深酒は無理なので潮時と見て引き上げた。