8月14日午後
岩木山を見た後の虚脱感。とにかくそれから津軽半島を北上した。それはたまたまそちらの方向に車が向いていただけだった。この時点では東北一周するとはまだ考えていなかった。半島のまん中を走る。ずっと走る。やがて「シジミ汁」の看板やのれんがやたらに目立つ。
十三湖だ。そして海。しばらく見なかった海があらわれたその時、ラジオから津軽海峡冬景色が聞こえてきた。なんというタイミング。NHKの番組で石川さゆりがその歌を歌うまでのエピソードを三木たかし本人が語り、妹の黛ジュンのデビューや当時のヒット曲などを聞きながら、そして大声で歌いながら走る。懐かしい歌ばかりだ。もうすぐ竜飛岬、津軽海峡だ。またちょっとウルウルしてきた。涙腺がだらしなくほんとうにだらしなくなってきた。竜飛岬の道路標識を頼りに走っていたが、それてきていた。それ程国道が頼り無い道になっている。小泊村の細い道路に迷い混んだ。3時ぐらいだろうか、夏の夕暮れは早いせいかもう赤くなりはじめているような何か不思議な感じがした。乗用車が行き違うのがやっとの道路をいくと、自分が子供の頃見た昭和30年代の家並み。先ほどの歌と重なって妙な気分。かまわずどんどん行くとちょっとした漁村。迷ったので詳細な地図を見ようとコンビニを探す。ない。仕方がないので本屋らしい店の前で止める。ほんのちょっとしか本がおいてない木造で津軽の厳しい自然に絶えてきたグレー色の板塀。中に入って地図を見た。だいたいの位置確認して地図は買わない。ふと見ると雑誌「アサヒカメラ」今月号があった。おもわず手にとりパラパラとめくる。当たり前なのだが、先月自分でデザインし、雑誌社に入稿したカメラメーカーの広告があった。ここで不覚にもウルウルしてしまう。こんなさいはてのこの店にも私がやった広告が毎月とどけられていたのだという妙な感慨。そしてなんとか売れて欲しいと願いさまざまな葛藤などがあったカメラメーカーとのほぼ20年間。ここ数年は不況にもめげす好調に売り上げをのばしている。この仕事をやって来てよかったなと思う瞬間だった。
細いさらに細い道を海岸にそって登って行くと行き止まりになった。断がいの上にある、ちょっとした展望公園になっている。眼下は日本海。素晴らしい景色だ。断がいの上、公園の柵の手前にテントが4つぐらいあった。何処から来たのか、女子学生だと思われるグループがキャンプしている。ここは夕日の絶景ポイントなのだ。まだ明るい海をずっと見ている、たぶん日が沈むまでずっと見ているのだろう。自分もここで夕日を見て今夜は車中泊しようかなとも思った。それにしてもまだ早い。竜飛岬までいけばちょうど夕日を見ることができると思った。女子学生と夕日を見ながら楽しい会話をする自分を想像だけして、来た道を戻り国道339号をさらに北上。瀧泊ラインという海岸すれすれの道を行く。そこは先ほどとうって変わり、広い道路で海の上に迫り出して立派なログハウスやオシャレなパステルカラーのリゾートハウスがずっと連なっている。まるで湘南海岸のようだ。ここも夕日が絶景だと想われる。
やがて海岸線から山登りになる、どんどん登りちょっと下ったところに竜飛岬があった。

イカつり漁船


小泊岬の展望公園


静かな小泊港


もうすぐ竜飛