8月13日午後5時
秋田市につく。銀行によってきてなかったので所持金が少なかった。駅近くの繁華街に出て銀行を探す。
車を止めた銀行の横にビジネスホテルがあったのでついでに聞いてみた。実はこの時点ではたぶん夏休みのまっただ中、無理だろうと思っていた。テントも寝袋もあるし、いざとなりァの気持ちだった。ところが、「お一人ですね、空いてますよ」。そうなのである、特に観光地でない限りビジネスホテルはこの時期空いているのだ。他の客もほとんど見当たらない。道路も後で知ったのだが、高速道路はいつもの大渋滞、しかしここまでの一般国道はガラガラ。ちょっと冷静になって考えると何の不思議もないのだが、やはり盲点。なんか拾い物をしたような気持ちになった。すぐにチェック・イン。秋田の駅周辺に散歩に出た。その時、はじめて携帯電話が鳴った。k本からだった。「おい、いまなにしてる?」彼は高校の同級生で公認会計士。同窓会で私の家の近くに住んでいることが分かり、それ以来時々呑んだりするようになった。家が近くと言うこともあり、暇な時ゴルフの練習を誘ってくる。「今、秋田」「なに、秋田?なにやってんの」「一人旅だよ」「ひぇー、いいなお気楽でおまえは」「サイコウだよ。のんびりしてるよ」「いいな、いいなぁ、まあ気をつけて」と何も用件を言わずに切った。たいがいたいした用事ではなく、ゴルフの練習か何かだ。あたりが夕暮れがかってきた。ときどき写真を撮りながら歩いていると、ちょうど開店でのれんを出している店があった。「魚料理」とある、腹も空いたので誘われるように入る。寿司やのように硝子ケースのカウンターと小さいテーブルが4つぐらい、奥には小上がりもある。のれんを出していた40歳ぐらいの割烹着の女性に、「ビール1本となんか、美味しい魚お願いします。」と言うとちょっと悩んだような顔をして「はい、ちょっとお待ち下さい」といって中へ行った。暫くしてたぶん同年代だと思われる店の主人らしき人が出てきた。しっかり白衣に鉢巻き、料理人の格好をしている。「あのねぇ、こんなお盆のさなかにいい魚なんかねんだよ。漁師は殺生しないからね、船出てないんだよ。」と秋田弁で言った。これは普通の人なら怒られているように感じ、感じ悪いヤツだなと思う。私は生まれが長野の山奥と言うこともあり、そして仕事で福島県のいわき市によく行っていたこともあり、慣れている。これは普通に言っているだけ。よく標準語ばかり聞いている中でいると方言が怒っているように聞こえる。そうかお盆だからね、そりゃそうだ市場も休みだなきっと。それにしても無愛想なオヤジだ。何やら手は動いている。いくつか小さな小鉢に煮付けとか和え物のようなものが出てきた。何も言わないしこちらも何も聞かない。しばらくビールを呑んでから、秋田の地酒を「常温で」と頼む。唐突に「岩牡蠣あるけど・・・」「お願いします」「今日俺が捕ってきたヤツだ」。なんだよ、あるんじゃないの、魚じゃないと言う意味か?漁師でもないしな。すると今まで見たことない大きな牡蠣が出てきた、食べた。旨かった。「旨い!」というと「うめえだろ、天然物だ。今が旬だからな」とはじめてニコリとした。それから貝や小魚みたいな食べたことのないものが小出しにでてきた。酒が進んだ。私は基本的に刺身は嫌いではないがあまり積極的に食べることはない。むしろちょっと加工した小さな魚介類が好きだ。だからどんどん呑んでしまう。黙々と食べ、呑んだ。すっかり酔ってしまつた。たぶん2時間ぐらいいたのだろうが、結局他にお客はなかった。さすがにお盆、人通りがない。

秋田の近くで見つけたひまわり畑


どうやら観光用


千畳敷


この海をみりゃ、悩みなんか・・・。悩んでるな