12月29日南紀白浜から串本町、このあたりが突端。あいかわらず42号。
那智の滝で有名な那智勝浦。ちょっと内陸にある滝を観に行く。近付くと例のごとく有料駐車場への手招き。私の嫌いな光景。無料の駐車場がいっぱいなので、車から見える滝を拝んだたけで42号に戻る。
311号にはいる。このあたりから地形が複雑に入り組む。入り江が沢山あり、崖の上からみたり、下って港に出てまた上ってと言う感じ。時々車を止めてシャッターをきる。
熊野に入る。このへんから熊野灘。すばらしい景色。何度も車をとめる。しかし、道が国道でありながら乗用車がやっとの幅。こんな時つい口ずさむのが「街の明かりが、とてもきれいね、ヨコハバ〜ブルーライトヨコハバ〜」。しつれいしました。
それにしても標識も無くなってしまって、本当にこれでいいのか不安になる。まあ東北にもいっぱいそんなところはあったが。
さすがに昨夜はちゃんと寝てないので疲れが出てきて、今日は早めに宿を確保しようと思う。
よさそうな民宿が沢山あるので、迷いながらももう少し、もう少し、と行ってしまう。走行しているうちに4時を回った。民宿は夕食の用意があるのでそろそろかなと思い。適当なのにはいってみる。誰もいない「すみません」と何回か言うと出てきた。「営業してます?独りなんですけど泊めてもらえます?」すると40前後の女将らしい女性が「んーっいいですよ」。言い淀む、やな感じである。「車そこでいいですか?」といい駐車場に戻りかけて、このまま行っちゃおうかとも思ったが、出てきて「そこに止めて下さい」と言われたので、腹を決めて、言うとおりに動かして荷物をおろす。
通された部屋は6帖、押し入れがない、両面壁。しかも海に面した窓がちょっと小さめで高い位置にある。無理矢理建て増しした感じの「まるで独房?」。小さいテレビがあるがコイン式。まあこれは分かる。ところがエアコンもコイン式。ちょっと寒くなってきていたので、100円をいれてスイッチ入れる。冷房のレバーになっている、暖房という文字がない。これクーラーだよ・・・切る(100円?)。食事は6時30分になると言われていたので、それまで寝ることにする。座ぶとんもないので、自分のボストンバックを枕にする。疲れていたのですぐ寝付いた。気が着くと寒さで震えていた。あわてて車からダウンジャケットを持ってきて、もう少し寝ようと思ったら、「風呂の用意がで来ました」。なんとか風呂で暖まった。もちろん浴衣、丹前はない。さすがに温厚な私も不機嫌になりかけたが、それを知ってか知らずか、高校生ぐらいの娘が「食事出来ました」と伝えに来る。母親に似ず、ちょっとかわいい。運んでくるメニューの説明をしてくれる。2cmぐらいの緑色の巻貝が山盛りある。「このへんではベシといいます。楊子を使って食べて下さい。」これが、旨い。20帖ぐらいの部屋に私の食卓と端に家族だんらんの炬燵。しかもストーブが無駄に二つもついていて暖かすぎる、風呂上がりの私には暑い。御飯が来ないで刺身がどっさり来る。「これが真鯛、こっちは・・・」(忘れた)豪華だ。最後に母親が来て「御飯になさいます?」と不思議そう。酒なんか頼まねエぞとまだ少し怒っているわたし。「はい」という。(ささやかな抵抗?って何にも抵抗になっていない)ダンナがきて炬燵にはいる。ちいさな声で「いらっしゃいませ・・・」カミさんに言われて来たのか、何を話したらいいか困っているような様子。無口なダンナをたしなめるように奥さんが来て話す。「その鯛、今採ってきたばかりだから旨いでしょう。60センチぐらいだったから味は一番いいと思うよ」よくみるとみんな新鮮で立派だ。渡船民宿でダンナが釣り客をつれていって釣ってきたものらしい。別な部屋で宴会をやっている音がする。「事前に予約していただければ、もっといろいろ出せるんだけど、今日はこの鯛とイカしかなくて」とダンナ。いやいや充分です、私は刺身あまり分かりません。新鮮かどうかぐらいは何とか分かるけど、大きさで違う脂ののり具合など言われても・・・「いやぁ、美味しいですね。ちょっと酒断ってましてね」なんて妙な言い訳をする。
酒頼めば良かった。「60センチってでかいですね」とわたし。するとまたカミさんが「このへんでは120センチもあがりますよ。それが病み付きになってショッチュウ来るお客さんいますから。今日のお客さんも70センチ以上釣ったらもう死んでもいいと言って行ったのに75センチつっちゃって大騒ぎ。魚拓とりたいとおっしゃるので私が一緒に近所にお願いに行ったら、お客さんの前で、そんなの小さいよ80センチ以上持って来いと断られちゃって、可哀想なコとしちゃった。」と大声で笑った。その時上の歯、両側犬歯当たりが抜けていた。それで口にて当てて笑ってやがったな。「私がここに嫁に来たころだったか、ひと坪(180×180センチ)のイケスに対角線にはいって動けない鯛を見たよ。死ぬと同時に背中が割れちゃってね」「ええーっ鯛ってそんなにでかくなるんですか?まぐろだなあまるで。」焼かなくてもぱんぱんで背中割れちゃうのかなあと勝手に想像しているところへ、それまで黙っていたダンナが「そんなに大きくならなえよ」とボソッとひとこと言った。

正月準備


ネコがいちゃもん付けながら横切った


熊野灘