12月31日午前7時45分二見が浦民宿を出発。宿代8000円、お銚子2本1600円。
23号線を名古屋目指す。ほとんど海側は工場地帯。
道路はさすがに広く渋滞もなく、ほとんど高速道路状態で一気に伊勢湾をぐるっとまわって知多半島へ入る。常滑市当たりまではほとんど工場地帯。247号で半島一周し、三河湾をぐるっと回り、1時42分蒲郡市。
この辺りでK田氏とカヨチャンから「いまどこメール」。実はこの当りに来て疲れを感じはじめた。このまま真直ぐ東名に入って帰ろうかなと思いはじめていた。でも当初の予定はこの先の半島も制覇するつもりだったので悩んでいた。知ってか知らずかちょうど二人からのメールで息を吹き返した感じがした。やっぱサポーターの力は絶大である。
知多半島の入口付近でちょっと渋滞しているとき、前方にボードに文字を書いて掲げている女の子が見えた。ヒッチハイクだ。私は学生時代、仲間から「ヒッチハイクの神様」と言われていたことがあるぐらいヒッチハイクをしていた。当時はフォークソングが流行っていて「フォークの神様」とか「フォークの父」とかいうキャッチフレーズが良く使われていた。それで自分が乗せてもらった経験から、ヒッチハイクがいたら絶対乗せてやるんだという決意を持っていた。渋滞しているので少しずつ順番にそのヒッチハイカーの女の子が近付いてくる、誰ものせない。よしいいぞ、次も乗せるな、俺が乗せてやると思っていたら、すぐ前の三河ナンバーの地元スポーツタイプが声かけている。その時みたらボードには「遠いとこ」と書いてあるように見えた。(良く見えなかったのでもしかしたらそれに似た地名があるかも)茶髪のまだ幼い感じ。乗り込んだ。そのまま様子を窓越しに見ていると、会話しているのは若い男、しばらく走ると市街地の方へ入って行ってしまった。それにしても半島の入口でしかも半島の突端へ向かう車線でヒッチハイクするのは変だ。そして市街地へ入って行くのも、なんだったんだろう。乗せなくて良かったのかも。
259号で渥美半島へ。突端の伊良湖岬へ着く。
伊良湖崎は、島崎藤村の「椰子の実」の歌で知られている。歌碑があった。
二人のおじいさんが夕日を見ていた。その姿がとても滑稽だったので失礼して後ろから写真を撮った。そうしたら、話し掛けてきた。
「そのカメラであの船撮れる」遠くにタンカーがいる「いやあ広角だから、豆粒ぐらいですね」「何撮ってるの?」「夕日です」「あんた何処から来たのあのビューホテルに泊まるの?」後ろを振り向くと20階以上はある高層の建物が、いくつもある。リゾートホテルかマンションか。「東京からですけど、今日このまま東京へ帰ります」「明日はこの辺り大変なんだよ人でいっぱいでさ、みんな遠くから日の出見に来るんだよ」そう言えば、車両を規制誘導する準備をしている人が出ていたのを先程見た。明日は元旦だ。「ああそうなんだ、日の出の名所なんですね、残念だなあ」「残念なこたァないよ、今見てるこの夕日最高だよ、私ら毎日ここで見てるけど、こんな綺麗なのはめったにないよ。君はラッキーだよ。明日の朝だってわかんないしさ。同じだよアレがあっちにあるだけだよ。」と落ちかけた右の太陽を指していた手を半円描いて左の方向を指して言った。岬の突端なので両方とも水平線上である。「そりゃそうだな、同じ太陽なんだからね。明日の朝が特に変わってるわけないな」「そうそう。ばかだねえあんな高いホテル泊まってさ」と大声を立てて笑った。二人とも作業服を着ていて体つき年格好全く同じ、顔もなんか似ているような感じ。
一人が「俺はねえ、ガキのころから麻布の蕎麦やにデッチで行ってたんだよ。」「へえ、今でもあるのかなあその蕎麦や」「もうないよ、戦争で焼けたらしいよ。兵隊にとられて横須賀に入隊したよ。戦地まで行かなかったけどナ、すぐ終戦になっちゃって」「あっうちのオヤジと一緒だ、大正14年位でしょ、生まれ」「そうそうふたりとも14年で同級。」「へえ同級生?それにうちのオヤジも。なんか奇遇だなあ」。同級とは驚き、そういえば私の父親も奥信濃で小学生の同級生と今はいつもゲートボールをやっている。この二人ずっと一緒だったのかはわからないけれど、今は竹馬の友と一緒に働いて、一緒に夕日を見ている。まさに「スタンドバイミー」。なんかうらやましい。しばらく三人で並んで無言で夕日を見ていた。「そろそろ逮捕されちゃウから行かなきゃ」「えっ誰に逮捕されるんですか?」「あそこのフラワーパークで働いているんだけど、うるさいお姉ちゃんがさあ、見回りに来るんだよ、さぼってるとさ」「ええっ、いまさぼってたの」「そうそう」と軍手を出しながら、首をすくめて笑った。たぶん3時の休憩なんだろうけど、夕日を見にフラワーパークの豆トラックで二人で来た様子。「それじゃあ気をつけて帰りな、42号で行くんだろ、方向は一緒だよ」と一緒に戻って駐車場を出る。そこから5分程先導してくれて走ったところで互いに手を振って別れた。4時15分だったので、やっぱ少しさぼりやがったな。
そこからはどんどん日が落ちて行く。大平洋を右に見ながら黙々と走る。浜名湖に着いた頃はもう真っ暗。国道1号を経て東名高速へ。
ここで今回の旅は終わり。

こんな入り江がいっぱい




知多半島突端?








夕日を見る仲のいいオヤジ