8月12日。朝6時に起きて6時25分にビジネスホテルのロビーに出ると、まだ亀田さんはいなかった。30分集合と言ってあったのでロビーからすぐ見える駐車場の運転席でハンドルを握って待っていた。6時半丁度にロビーに現れた亀田さんをバックミラーで発見。私がいないのを確認してほっとした様子。わたしが車から出て「行きますよ」とホテルのドアを開けて言うとビックリして慌てているのがとても可笑しかった。「6時半に来たのになあ、せわしないなあ」と・・・、せっかちな性分で申し訳ない。カミさんにもいつも言われる。「待ち合わせ時間より必ず前に到着しないと気が済まないのはいいけど。それはそっちの勝手、10分も前に『もう着いたよ』と携帯したりとか、時間通りに来たのに言葉では言わないが『遅いよ!』と目で言うのはやめなさい。・・・と。
車が動き出してすぐどっちへ行けばいいのか解らないことにに気ずき、地図をみようとして・・・「ない」。「あっもしかして」と止めて車の屋根を見るとカメラと地図が屋根にチョコンとのっかっていた。危うく大事な地図とカメラを無くすところだった。「落ち着いて行こうよ!」と亀田さんは大笑い。せっかちでそそっかしいと大笑い。どうもすみません。朝から反省。
空は曇天、まあ昨日の雨に比べりゃいい。海岸線に近かったのですぐに海が見えてきた。長崎を目指す。
朝食を取りたいのでトラッカーの朝飯やを探す。ない。佐賀県に入る。「虹の松原」でひと休み。
0時、「やっぱ魚食べたいね」佐世保の手前相の浦港で探したがそれらしい店は見つからない。寿司屋に入る。客は誰もいない。ちょっと不安だったが、おいしかった。それで「アナゴにしてはずいぶんボリュームありますね、もう一遍ください」と私が言うと「うなぎだけど?」「あっそう・・・」まあとにかく満足。
ちょっと半島の海がきれいな展望駐車場に止めていた時、亀田さんが
「どう考えても、九州一周は無理だよ。だから半周して今回は帰った方がいいよ」
「うーん、天気もよくないしね。」
「混むよう、土日に東京方面だから。」
確かに、今回の夏休みは去年と違い上京組が集中しそうだ。16日が土曜日という日程が悪い。
「無理しない方がいいよ。昨日の様子じゃ身体が持たないって!ぜんぜん元気なくしてたもの。木曜日、金曜日にゆっくり時間かけて帰るようにしないと。だから一周は無理だよ」と真剣に語り出した亀田さん。うーん、確かに疲れた。よほど私が元気ないのを気にしていたらしい。あまり深く考えず「フェリーで帰るという手はありますね。寝ていけるし」「・・・・それだよ」と亀田さん。「確か、宮崎あたりにフェリー航路あったとおもったなあ」ということになり、亀田さんが電話してみることになった。最初は「予約で一杯です。」と断られ、キャンセル待ちは当日キャンセルを現地(日向)で待つ方法しかないらしい。旅行会社らしかったので、フェリーの会社に直接かけてみた。それもダメだった。諦めかけたが、亀田さんが「もう一度だけかけてみよう、それでダメだったら諦めよう。」と電話をしたところ「あと一台分あります」と返事。予約できた。貧乏旅行を目指している訳ではないが、お金は極力かけたくない。車一台と運転手、乗客一名で82,000円は安くはなかった。亀田さんは帰りは車で一緒に帰るかまだ決めて無かったので、飛行機のチケットを買ってなかった。「それなら付き合えるから、半分持つよ」と言ってくれて一安心。40,000円なら東京までの高速代とガソリン代と一泊の宿泊料合わせた金額より若干安いかも知れない。亀田さんはちょっと割高かも知れない。予約とれてよかったような・・・複雑な気分だった。
長崎には東京で一緒に仕事をしていたことがある友人が住んでいるので、電話してみた。長崎の住人吉岡さんは亀田さんとも面識があり「おお待ってましたよ」と、突然電話したにもかかわらずあってくれることになった。仙人のような風貌のうんちく語りの吉岡さんがビジネスホテルを予約してくれた。ホテルの近くで待ち合わせて「長崎土産はこれしかない!」という海草に砂糖をまぶしたような生菓子のある和菓子屋に連れて行ってくれた。一口食べて二人とも「なるほど、うまいねえ」。
「これしかない」と豪語している仙人に反抗するすきはなかった。土産として会社にも自宅用にも買ったが、私が口にしたのは後にも先にもその試食の一口一回だけだった。
まだ日の明るいうちから眼鏡橋の近くの小料理屋に入って呑み始めるとウンチク合戦になってきた。それぞれがどうも自分の主張を言いたい。こんな時はたいしたことは語っていない。要約すると「年老いてからだが弱ったと言うこと」だけだ。3人とも聞き上手とは言えない部類の人間だとその時強く感じた。表に出ると眼鏡橋がある。渡りながら吉岡さんが「あのね、人間て面白いね。この眼鏡橋を見に来た人はね、渡り切らないんだよ。なぜだかわかる?」きたきた来ましたよ、これがウンチク。「平な橋は知らんけどね。この橋まん中が盛り上がってまあるくなってるでしょ。こういうのってね人間は一番高いところ、まん中に来ると、頂上を極めたと言う気持ちになるんだな。だからもういいとおもうのか、渡らずに戻るんだよね。面白いでしょ。ねっおもしろいでしょ。」二人とも「なるほどねぇ」・・・・。そういえばこの「なるほどねぇ」という言い方はたいがい興味ない話を聞かされてる時につかう「なま返事な、あいづち」だなんて誰かが言ってたな。なるほどねえ。
やっぱり長崎なんだから「おいしいチャンポンとか皿うどんを食べたいな」という二人の要望に応えてしばらく考えてから「まあ、最近ちょっと味落ちたけど、ここなら文句ないでしょ」といいながらその店に行った。味落ちたのかい(わざわざ言わなくとも)、そりゃあ文句はないですよ、仙人の吉岡さんが言うんだから文句なんかありません。