8月13日。亀田さんが、旅を中断して帰る日だ。小松空港まで送ることになった。兼六園を見て行こうと朝の金沢の街を走る。有料駐車場ばかりだったのであっさりとやめる。「有料だからね」、誰も反論しない。
小松空港が近くなってきた時、「おお、安宅の関だ」と亀田さんが叫んだ。「なんですかそれ?」「知らないの、弁慶・義経の勧進帳。関所越えで有名なあの安宅の関」。有名な割には観光客がほとんどいない。無料の駐車場も一番乗り。神社になっていて、巫女が二人で弁慶と義経の「勧進帳」を講談のようなかたり口調で説明している。「どうぞよろしかったら、お聞きになりませんか?お代は戴きません。」。無料となれは聞きましょう。45度首を上に向けて、かけてある「勧進帳」の様子の絵を三人で見ながら聞く。最初はあまりにも講談士のような語り口調に、にやにやして巫女の顔をときどき見たりしていたが、だんだん引き込まれてしまった。そう言えばこんな話聞いたなあと思い出した。義経が弁慶にたたかれて、その主従愛に感じ入った役人が・・・あたりに来ると不覚にもウルウルしてしまった。他の二人もいつの間にか真剣に聞き入っていた。なんのことはない、そのあと「難関突破のお守り」を結構強引に売り付けられた。私はもちろんそんなもの買いませんが・・・。
その神社の先にきれいな砂浜があった。快晴である。しばらく日本海に見とれていた。見ると休憩用の吾妻やのようなものがあった。60位の男と40位のケバイ女。私が海を見ていると声をかけてきた。女はどこかへ行ってしまった。男が「天気がいいから、いいね今日は」。私はその初老の男とベンチに二人で腰掛けてしばらく新潟から能登半島をずっと回ってきたことなど話したりしていた。気がつくと亀田さんと小池さんが離れたところから二人で心配そうにこちらを見ている。「?」。「これから、どちらへ?よかったら私らで案内させてもらいます。」「えっ本当ですか?でもいいです。地図みながら、迷いながら行くのが楽しいんですよ。御親切に、ありがとうございます。」と言って立った。そして亀田さんと小池さんの方へ行った。二人は笑いながら「ばかだねぇ、騙されかけてんの」。「ええ?」「あれはねえ、ヤミのガイドなの」と亀田さん。「えっ有料ってこと」そこではじめて、私は理解した。弁慶が白紙の勧進帳を読んでいるのを知りつつ、疑われた主人である義経を「お前のせいだ」と殴った弁慶の主従愛に感動し、通行させた関所の役人もいれば、ただ騙されかけるヤツもいる安宅の関。
小松空港で亀田さんを降ろした。どうしても2時までに東京に戻らなくては行けないということだった。「用事が済んだら、また合流しましょうよ。明日だったら、米子空港当たりで拾えますよ」と私が言ったら、「いいねぇ」と笑った。そして残念そうに空港ロビーに入って行った。
地図係を亀田さんから小池さんに引き継ぎ、そこから海岸線を目指して走る。福井県に入る。
12時、東尋坊に着いた。もちろん有料駐車場だったらやめるつもりだ。麦わら帽子のオヤジが駐車整理券?に渡される。見ると「駐車される方は○○でお食事、お買い物をして下さい。」と大きく書いてあり、小さく「駐車料を戴く場合もあります。」と書いてある。これはいやらしい表現だが、無料だと言うことである。
当然のこととして、あえて指定の店以外のところで食事をした。全く意味の無い駐車整理券であり、しかも資源、人件費の無駄である。プンプン。でも広告ってそんなモンだったりして、つまり小池さんも私も・・・。まあいいか。

浪々と語る巫女


結局お守りを・・・


最後の一本?


赤杭のスタンドバイミー


オヤジたちのスタンドバイミー

変な駐車券の店